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栗山朋子さんからのメッセージ(原文) 2014年7月

飲み心地が良いだけでなく、亜硫酸に過度に頼ることなく安定して長く楽しめるワインが作れたら何よりと思っています。葡萄を作っているヴィニュロンが腕が立つ人であるのは確かで、彼の仕事に報いるクオリティーのワインに仕上げるのが抱負なので、それが少しでも実現しているなら本望です。




白(シャルドネ100%)はすべて228ℓ容量の小樽で野生酵母で発酵させています。発酵が比較的速めに、理想的には3週間から4週間で終わるように、発酵終盤はカーヴを18度ほどに温めています。マロラクティック発酵も自然任せです。酵素を含む清澄剤はいっさい使用していません。瓶詰め3週間前に粗めに軽く一回濾過しています。若いうちはカチっとしており、年を経て花開いていくような白が好きなので、バトナージュはよほど若いワインが痩せていないかぎり行いません。ピュアなワインが好きなので、今までのところ白には新樽はいっさい使っていません。10年から3年ほど経た樽をシャサーニュの友人から買い取って、洗浄と滅菌消毒をして使っています。

ブルゴーニュ・ルージュとブランの樽熟成期間は10ヶ月ほどで、翌年の収穫期直前に澱引きをしてステンレスタンクに移し、現在まではどのミレジムもクリスマス直前に瓶詰めしています。2011の村名ムルソーは長く閉じていたので、2012年11月に澱引きしました。

赤ワインは古い木製の開放式発酵桶で、やはり自然発酵で仕込んでいます。2012年より醸し中のルモンタージュまたはポンプの使用は一切無しで、発酵最終盤に数回ピジャージュしています。アルコール発酵後はすべて小樽熟成ですが、村名については20%ほど新樽を使い、ジェネリックには新樽は使用しません。マロラクティック発酵も自然任せです。赤については白と同じように清澄剤は使用せず、濾過も行いません。

特に赤ワインについては亜硫酸使用のタイミングを遅らせ、総量も減らしていく努力をしています。そうすることで得られるワインの純粋さ、テロワールのより素直な表現があると感じています。もちろん、フェノレや酸化、バクテリア汚染などのアクシデントを排除する環境下で醸造しています。今年(2014年)より、赤においては、全房発酵を積極的に取り入れて、より重層的でストラクチュアのあるワインを造りたいと考えています。

ただひとつ残念なのは、私たちは原則として原料を買い取って仕込みますが、2011年と2012年のブルゴーニュ・ルージュは葡萄供給農家が見つからず、このふたつのヴィンテージに限っては友人の蔵からアルコール発酵が完了したばかりのワインの状態で購入しました。彼はコンクリートタンクで仕込んでいます。1日2回のピジャージュに2週間強のキュヴェゾンと、伝統的な仕込みです。2013年はやっと彼から葡萄のとして安定供給してもらえるようになり、オートコート・ルージュを格下げして仕込みはじめました。




熟成能力については、同じ畑のものを数年造り続けていないので経験値がないのですが、2011のブランは還元に傾くように造ったのであと5年はフレッシュ感が保てるのではないでしょうか。2012のブランは、今までで一番の出来だと思います。2010年的な果実味と2011年のマティエールを併せ持ったブランで、気に入っています。ヴィニュロンが若手で、2013年以降も彼から安定供給を望めるので助かります。7年から8年、もしくはそれ以上もつかもしれません。2011のムルソーもやはり還元的に造っているので、10から15年は勢いを保つのではないでしょうか。2011のルージュも、今現在は果実のフレッシュ感がありますが、10年ほどで枯れてくるのではと思っています。

合わせる食事については、自宅では良質の食材をシンプルに調理した料理に合わせるのが好みです。ルージュについてはグリルして塩コショウをふったコート・ド・ブッフ、またはグリルしたラム。ブランはグリエしたスズキや鯛に塩をふりオリーブオイルをかけたもの。村名ムルソーは、オマールや海老などのグリエに合うと思います。ムルソーにかぎっては、良質のバターを焦がし気味にしたブール・ノワゼットを甲殻類にソースとしてかけても合います。5年ぐらい熟成した白には、フロマージュも幅広く合わせられます。